前日の外来語についてのセッションに続き、JLD Distinguished SpeakerのAnneさんから和製英語とその創造力についてお話を伺いました。
和製英語について話される前に、「正しい言葉、日本語」とは何かについてお話しされ、「全然大丈夫」や「させていただきます」など、以前は正しくないとされた言葉が市民権を得ていること、言語は生きており、変化していることをお話しされました。本来の意味を理解したうえで、新しい言葉を批判するのではなく、楽しむべきであるとお話しされました。言語の役割の一つは、コミュニティーを作り上げることであり、その目的のために新しい言葉が作られます。和製英語、方言、若者用語は同じように使われており、コミュニティーを作り上げ、創造力があります。「いつメン」、「それな!」などの若者用語を例に挙げられました。だれのために、なぜこのような言葉があるかを理解することが必要であると強調されました。
ここで本題に移り、和製英語についてお話しされました。和製英語は、英語圏では通じない英語であるとされ、多くの人がバカにしているが、実際は日本語であり、日本語を話す人のコミュニケーションツールであることを強調されました。和製英語を英語と思わず、使い分けが必要です。本来の英語ではなく、和製英語が使われている理由は、1) 発音しやすい、2) 聞き取りやすい、そして 3) 想像しやすいことです。ランニング・マシーン (treadmill)、ベビーカー(stroller) を例に挙げられました。また、マラソン、ジュース、リベンジなど、オリジナルの英語とは意味が異なる和製英語についても話されました。和製英語は、英語を短くしたり、複数の英単語を組み合わせたりして、短く、わかりやすく、話しやすい言葉を作っています。例としてお話しされたのは、ペーパードライバー (one who has a driver license but doesn’t drive)やペアルック (matching outfit)などでした。
続いて、和製英語のパターンについて、例を挙げて話してくださいました。
1. テレコパターン (reverse Japanese English)
例:ベルトコンベヤー (conveyor belt)、オーブントースター (toaster oven)
2. 省略パターン (多くは語尾が省略される)
例 : デパート (department store)、アイス (ice cream)、アプリ (application, (app))
3. マイ (My)
例 : マイホーム、マイペース、マイカー
4. 省略 (abbreviation) (2つの単語の組み合わせ)
例 : リモコン (remote control)、スクショ (screen shot)、ユザナ (user name)
5. アップ・ダウン
例 : レベルアップ、スキルアップ、キャリアアップ、コストダウン、プライスダウン
6. 外来語 + る
例 : メモる (to take notes)、バグる (to be buggy)、タクる (to take a taxi)
7. ウイズ (with)~、Let’s~
例 : ウイズコロナ、ウイズフェイク、レッツビンゴ (Let’s Bingo)、レッツハロウィン (Let’s Halloween)
また、コスプレ、アニメ、アイドル、タレントなど、英語になった和製英語もあります。
次に、和製英語クイズで、私たちが参加する機会もありました。
最後に、Anneさんが和製英語から教わったこと、彼女の人生を変えてくれたことについて話されました。和製英語が日本語であることを知ったとき、私たちは、それについて、またその背景にある文化、そして世界観を理解する必要があると思ったと言われました。京都人である親友に出会った時のことを例に出されました。日本の言葉、文化は理解していたが、日本の世界観を理解していなかったことに気付いたことを話してくださいました。国の文化、人間の行動と価値観は世界観から生まれてきます。文化は何 (what)ですが、世界観は何故 (why)であり、世界観を理解しないと、なぜ人が特定の行動をするかを理解するのが難しいと話されました。例として、添い寝 (co-sleeping) と、彼女の経験を引用して、いただきます (命をいただく – 感謝) を挙げられました。「何故」を理解しようとする心が必要であることを強調されました。これを知るきっかけを与えてくれた和製英語に救われたと話されました。また、翻訳する際に、直訳するのではなく、言葉が意味することや、その背景を理解する必要があることを思い起こさせてくださいました。
このセッションでは、和製英語、またその背景について学ぶことができました。Anneさんの日本語、和製英語に対する情熱を感じ、また、「何故」についてお互いに理解することが必要であることを改めて思い起こす機会となりました。セッションは、楽しく、インタラクティブなもので、皆が参加することができました。
■Kazumasa Aoyama/青山一正
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