
Rika Mitrik(ミトリック理香):
Once an in-house translator, Rika Mitrik is now a freelance English-Japanese interpreter and translator. She has been active as the JLD volunteer, including as Secretary-Treasurer as well as sitting on the Planning, Editorial, and Nominating Committee member. In this blog article, Rika, an ATA-certified English-to-Japanese translator, interviews her long-time colleague Mina Seat and conveys some uplifting messages to us, the JLD members.
Mina Seat(シート美奈):
Mina Seat, once a professional English-to-Japanese translator, was very active within the JLD community. She supported the division as the Secretary-Treasurer for four years. In addition to being a project manager for translation projects, she has also worked as a Japanese language instructor at UMBC (University of Maryland, Baltimore County) and Bowie State University, and as a project manager for various education-oriented programs.
2025年6月20日に開催されたJLDウェビナー、「原点を見直し、未来を見つめる- Our Origin Story: Fuel for the Future」によせて「先行きが不透明な時代に通翻業界にエールを送る寄稿を」と依頼され、私、ミトリック理香が2004~2005年にSecretary-Treasurerを務めた後、2期引き継いでくださったシート美奈さんとの対談をまとめました。
美奈さんは20年以上前にM&K Communicationという会社を立ち上げられ、日米様々な業界のクライアントから、ビジネス立ち上げや、人材確保など、多様なプロジェクトを引き受けてこられました。当初は通翻業が半分くらいを占めていたそうですが、現在ではその割合は1割程度に低下しています。つまり、以前は付加価値的に提供していた業務の比重が上がり、さらに多角化してきたということでしょう。
美奈さんは日本在住時は大学、短大、大手予備校などの英語講師でした。若者相手に言語を教えるのは「天職」のようです。渡米後は日本で育った義理の姉で米国弁護士の資格を持つブレンダ・シート氏(2012年サンディエコカンファレンスでのスピーカー)が経営する訴訟支援会社で通翻業に従事していましたが、15年ほど前に知人から頼まれて日本語を教えることになりました。自身のお子さんたちも通っていた継承センター(日本語を継承語として小学生から高校生の日本にルーツのある生徒に教える土曜日学校)やUMBC(メリーランド大学)等を経て、一昨年はHistorically Black Colleges/Universities(歴史的黒人大学)であるBowie State University (BSU) 初の日本語プログラムを立ち上げ、今年度はジョンズホプキンズ大の大学院でも教鞭を執ることになっています。
教職もオンライン化やAIの影響を受けていますが、今後の方向性として、学校やクラスはコミュニティとしての機能、また他のコミュニティへの橋渡しの役割がより重要になり、教師はそのファシリテーターの役割も果たしていくのではないかと言われています。
BSUに集まる学生は、これまで各地でマイノリティとして過ごしてきた環境から、居心地のよい学習環境となり、ともすれば他文化への冒険意欲が薄れてしまうことがあるそうです。限られた大学生活で視野を広げ、成長していけるように、と導入されることになった日本語プログラムを立ち上げるにあたり、学生に提示したのは、日本語を学習するだけではなく、知らなかった世界に関心を持つ姿勢を磨くことだったと言います。1年間切磋琢磨した学生たちは美奈さんがクラスで発揮したリーダーシップのとりこになったようです。
自ら日本語講師を務める傍ら、M&K Communicationでは日本に派遣される連邦政府職員を対象とした日本語研修や日本在住の生徒さん向けのオンライン英会話クラスを提供しています。その他、美奈さんが得意とするのは、クライアントからプロジェクトを引き受けて適役な実務者に振り分けるプロジェクトマネジメント、どんなプロジェクトにも付き物の交渉などの業務です。
ジャグリングのように複数の仕事をこなしてこられた美奈さんは日本語の教え子をインターンとして起用することもあり、会社の業務を担う仲間にもこれから社会に出ていく若者たちに対しても「仕事は自ら作り出すもの」という姿勢を貫いています。クライアントのニーズを察知し、さらに踏み込んだサービスを提供するために既存の考えに捉われず、視点を変えたり、ちょっとした工夫をしたりすることで報酬に繋がる作業が生まれることも多いとか。
例えば、いつも英語のネイティブチェック作業を頼んでいるスタッフにあるグラントプロポーザルの取りまとめの補助を頼んだところ、長年仕事を共にしてきたうちの一人は「グラントは手掛けたことがないからできない」と断り、もう一人は経験のない作業でも、普段の仕事の様子から美奈さんが主張したいだろうことを察した上で、「こうしたらいいのではないか」と依頼主の美奈さんには思いもつかなかった提案をしてきたことがありました。アウトソースしようかという業務を抱えているクライアントにとって起用したくなる業者の姿勢はどちらでしょうか。
まだ報酬の対象とはなっていない課題を見極めて業務を生み出す過程にも似た点があり、人との繋がりの中から生まれることが多いそうです。
最初は知り合いが立ち上げようとしているプロジェクトを応援するために適任な同業者に無償でお手伝いを頼んでいたことが信頼関係を築く結果となり、機が熟した時に双方に報酬の生じる仕事につながることもあったと言います。
そうした点ではATAのような同業者が集まる業界団体で、同じ言語に携わる私たちがJLDに属し、組織のための作業をボランティアで行う際には、自らの力量を高める訓練になっているだけでなく、知らず知らずのうちに将来のチームメンバーやプロジェクトの準備を整えているのかもしれません。
AIにこなせない仕事を模索していく上で、自分の居場所を見つけ、保持するためにも、志を共にする人と繋がって情報を共有し、学び続けることから受ける恩恵を大事にすべきではないでしょうか。
【編集】佐々木サマーズ 章子、楠田純子
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