Presented by Tomoko Tamura 田村智子
2021年10月に開催されたATA 62nd Annual Conferenceにて国際基督教大学准教授の田村智子先生によるセッション「Police Interpreters from Vose (1892, Massachusetts) to Lopez-Ramos (2019, Minnesota): “Conduit” Shifted the Paradigm from the Sixth Amendment to the Fifth Amendment」に参加させていただきました。田村先生は、法廷において警察通訳者が訳した内容が、証拠として認められるのか、それともHearsay(直接に見聞きしたことでないこと)として認められないのか、それぞれどのような理論がその背景にあるのかを様々な判例を上げて考察しています。そして、結論として警察通訳者にまつわる問題はHearsayの問題(憲法修正第6条)ではなく、通訳の正確さの問題(憲法修正第5条)であると結論づけています。まず、Hearsayが証拠から除外されなくてはいけない理由は、1.信憑性の問題2.宣誓の義務なし。偽証罪に問われない。3.陪審員が実際の証言者を判断する機会がない4.被告にはその証言をした本人を反対尋問する機会がない。これは憲法修正第6条の対面条項(刑事事件)によります。通訳を介した裁判で、誤解や混乱が生じた場合の裁判所の判例では、Agent theoryが多く適用されるようになり、そこでは警察通訳者の発言は容疑者本人の発言とみなされ、有効な証言となります。つまり、容疑者が警察の通訳を使う時点でその通訳は容疑者のAgentとなり、通訳者の言葉は容疑者の言葉となり、容疑者は自分自身に対する反対尋問の機会がなかったとして文句を言えないので、第6条の対面条項には該当しないという理論です。さらに、通訳者が被告のConduit(導管)であるという理論が採用され、そうであれば、被害者や目撃者に対しても通訳者はConduitであるという考えに基づいた、Agent theory/Conduit theoryが広く使われるようになりました。通訳者の言葉が被告の言葉であるとするには、その通訳内容が正確であるという前提があります。ただし、警察通訳者は必ずしも通訳の専門家ではないという現実や、また告発側(警察側)の人間であることが多いという事実は、その証言が、正確性、中立性、守秘義務を満たしていないことを示唆します。すなわち、問題はHearsayかどうかではなく、通訳者の正確さの問題、すなわち修正第5条に示される自己負罪拒否特権の侵害に関する問題であり、通訳者が果たさなくてはならない責任はその正確さを担保すること、そのためには証言の録画が要求されるべきと締めくくっています。通訳者の訳出が正確でなかったために、刑が重くなったりする可能性があるとしたら、大変不公平なことです。また、有能な通訳者であっても間違いが100%ないということは言えないので、通訳者の訳出が検証できるようなプロセスを裁判に取り入れることが重要だと理解しました。今まで、特に関心を持って考えたことがないトピックでしたが、興味深く拝聴させていただきました。ありがとうございました。
■Megumi Musick ミュージックめぐみ
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