2023年10月に開催されたATA64th Annual Conferenceにて、北九州市立大学基盤教育センターひびきの分室准教授のアン・クレシーニ先生によるセッション「Foreign Loanwords and Japanese Society」に参加しました。アン先生は、応用言語学修士号を取得されており、日本語の言語学者としてご活躍されているほか、作家、作家、コラムニスト、ブロガー、コメンテーター、YouTuberとしての顔も持っており、「日本が好きすぎて、たまらん」をご自身の合言葉にされているぐらい日本の言語と文化が大好きだといいます。
今回のセッションでは、日本語に多数存在する外来語に焦点を当てて、そのような外来語が日本語だけでなく、日本の文化や日本人の考え方にどのような影響を与えるかについてお話をいただきました。
【なぜ日本語には外来語が多いのか?】
そもそもある言語が他言語から言葉を「借りる」ことによって外来語が生まれることは言うまでもないでしょう。では、なぜ他言語から言葉を借りなければいけないのか?
借主となる言語にその外来語が表現するピッタリの訳語がないからです。
「言葉は生き物で文化から生まれる」、とアン先生が仰っていました。また、アン先生によると、「ある言語にしかない言葉(=直訳不可能の言葉)は『魔法の答え』」だと言います。
文化が違えば、当然、生まれる概念や言葉も違います。島国であり、鎖国の歴史もある日本なら、欧州との文化の差は歴然です。そのため、欧州の文化や概念が日本国内に輸入されたり、ビジネスがよりグローバルになったりした今日、外来語が急増することはもはや必然でしょう。
【日本語における外来語の役割】
アン先生によると、日本語における外来語の役割は以下の4つです。
- ギャップを埋める
- 異文化のギャップを埋めているだけでなく、現代の日本では日本人同士のコミュニケーションのギャップを埋めてくれるのも外来語です。だからこそ、外来語はコミュニティで使い分けが必要だ、とアン先生は言います。
- 意味を柔らかくする
- 「純正」の日本語の言葉を使用した時と、外来語を使用したときで、言っている内容は同じでも、その微妙なニュアンスが変わることが良くあります。「今から会議を始めます」という日本語は堅く聞こえるが、「今からミーティングを始めます」はそこまで堅苦しい印象はありませんよね?
- 区別する
- 若者の方が外来語を頻繁に使うことは様々なアンケートや調査でも証明されています。しかし、外来語はそれを使う年代を区別するだけでなく、公私の場を区別したり、ビジネスの中でも業界を区別したりする役割もあります。
- ただただカッコいい!
- 「外来語って、最高にカッコいいですよね!」byアン先生
外来語について今までそこまで深く考えさせられることはありませんでしたが、アン先生の今回のセッションを拝聴して、改めて外来語の日本語における大切さに気付かされました。通訳・翻訳する際にも、「純正」の日本語と外来語を使い分けることで、様々な効果や演出ができるのではないかと感じました。ありがとうございました。
■(Gulchin Ilya グリチン・イリヤ)
Leave a Reply