Session 170: Wrestling Big Animals in English to Japanese Patent Translation
スピーカー:青山一正 (Kazumasa Aoyama)
青山さんによるこのセッションは、前回ミネアポリスで行われた「Taming Tiny Beasts in English to Japanese Patent Translation: English Function Words and Common Short Words」に続くものです。前回のセッションでは短い単純な単語の誤訳に着目したのに対し、今回は長文の誤訳について解析した内容でした。特許文献には長文が多く、平均すると1文に20数ワード、極端なものでは100ワード以上に及ぶものもあります。長文は複雑な構文になっていることが多いため、文章の構造を分析した上で訳出しなければ、とんでもない勘違いをしてしまいがちです。
このセッションでは、英文特許の和訳でよくある間違いを次の5つのタイプに分類して紹介しています。
括弧(parentheses)
英語と日本語では語順が前後で入れ替わることがよくあるため、意味を深く考えずに訳すと、括弧で囲まれた内容を挿入する位置を間違えてしまうことがあります。
関係節(relative clause)
関係節とは、which、that、who、whom、whoseなどの関係代名詞を用いて名詞を後ろから修飾するものですが、日本語の場合は英語とは逆に前から修飾するため、これも同様に挿入する位置を間違えてしまうととんでもない訳になってしまいます。また、英語の場合、関係代名詞の前にカンマが入っているものは「非制限用法」と呼ばれ、カンマがないものとは意味が異なるので注意が必要です。
修飾節(modifying phrases)
関係節と似ていますが、動詞+ingでつないだものが一例であり、これも意味をよく考えて訳さないと誤訳の原因となってしまいがちです。
同格節(appositive)
同格とは、文法上、一つの文の中で語または文節が他の語または文節と文の構成上の機能が同一の関係にあることを指しますが、簡単に言えば、カンマなどを用いて言い換えを行うことです。これも同様に、何がどれと同格なのか、何について説明しているのか、何について言い換えをしているのかを正しく理解せずに訳してしまうと、おかしな文章になってしまいます。
複数の動詞(multiple verbs)
一つの文の中に動詞が複数存在することはよくありますが、これらの動詞の後に続く内容がその両方にかかっているのか、片方にしかかかっていないのかの判断も、内容を理解しなければ正しく行うことができません。
それでは、このような誤訳を防ぐにはどうすればよいのでしょうか? 青山さんからのアドバイスは以下のとおりです。
- 自分の訳を(読者として)再読する
- トップダウン・アプローチ
- 文法上の手がかりを探す
- 文脈上の手がかりを探す
- 専門知識、調査
- 質問する(聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥)
このセッションは、講師が一方的に話すのではなく、インターラクティブに活発な議論が交わされました。今後も継続してこのようなセッションが企画されることに期待しています。■ (Hideaki Maruoka)
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