
Yoshihiro Mochizuki (望月良浩) has long been a scholar and educator. He currently holds the position of Teaching Professor of Japanese Language at the University of Michigan, Ann Arbor, and he is no stranger to the JLD. He started volunteering on the Planning Committee, gave presentations at ATA annual conferences, served as Assistant Administrator and Administrator of the JLD, and, most recently, served on the Nominating Committee. He discusses what his interactions with the division have been like as an ATA-certified English-to-Japanese translator.
はじめに
アメリカ翻訳者協会(ATA)の日本語部門(Japanese Language Division, JLD)で、Planning Committee メンバーを経て、Assistant Administrator、そして Administrator まで務めた経験を振り返ってみたいと思います。2015年から2019年までの4年間のAdministrator業務、そして2013年から継続的に関わってきたPlanning Committee での活動を通じて、この素晴らしいコミュニティで感じたこと、学んだことを新しいメンバーの皆様と共有できればと思います。
JLDとの出会い
私がJLDに加入したきっかけは、同じミシガン州で通訳・翻訳者として活躍していらっしゃる鈴木いづみさんの紹介でした。当時、勤務先の大学で日本語プログラムの一環として日英・英日翻訳を教え始めたばかりの私にとって、ATAカンファレンスは新しい世界への扉でした。2013年のSan AntonioでのATAカンファレンスが初参加でしたが、JLDのメンバーと出会い、アカデミックな学会とは違う雰囲気の心地よさに魅了されました。
翻訳・通訳業界の実務者の方々との交流は、大学に所属する私にとって非常に刺激的で、「来年もぜひ参加したい」と思わせる温かいものでした。以来、コロナ禍でハイブリッド開催となった年を除き、毎年ATAカンファレンスに参加し続けているのは、ひとえにJLDメンバーの温かさのおかげです。年に一度の「同窓会」のような気持ちで参加していますが、同時に、業界の最新動向を把握し、翻訳・通訳者の皆様とのネットワークを維持・拡大することもできています。
Planning Committee での活動
どういう経緯だったかは忘れましたが、まずは2013年からPlanning Committee での活動を開始しました。Planning Committee の主な役割は、ATAカンファレンスで発表するメンバーを選び、声がけして、プロポーザルを提出してもらうという重要なものです。この活動を通じてATAとJLDの仕組みや運営について理解を深めていくうちに、より積極的に関わりたいという気持ちが強くなりました。
そして2015年、同じく鈴木いづみさんから「Administratorをやってみないか」と声をかけてもらった際は、ベテランのメンバーがいる中で比較的若手の翻訳者・通訳者メンバーにこのような重要な役割を任せる姿勢に、JLDの将来を見据えた健全な組織運営を感じ、喜んで引き受けることにしました。
Administrator として力を入れた活動(2015-2019年)
2015年から2017年まではAssistant Administrator、2017年から2019年まではAdministrator として、4年間にわたってJLDの運営に携わりました。
Distinguished Speaker プログラム
通常のAdministrator業務に加えて、私が特に力を入れたのはDistinguished Speakerの招聘でした。Assistant Administrator時代に呼んだ村上春樹の翻訳者として世界的に名高いJay Rubin先生の講演は、聴衆の皆様からも大変好評で、やりがいを感じた瞬間でした。ご講演や晩餐会を通じて、雲の上の存在であったRubin先生との交流が生まれたことも、この役職ならではの貴重な体験でした。
JLDメンバー交流イベントの企画
Administrator時代に企画した New Orleans やPalm SpringsでのJLD会食では、JLD会員の皆様に楽しいひと時を過ごしてもらえたのではないかと自負しています。これらの交流イベントは、年に一度の「同窓会」のような温かい雰囲気を作り出し、メンバー間の絆を深める重要な機会となりました。
困難と挫折、そして成長
本業である日本語教育の多忙さと、JLDの活動のバランスを取ることは常に課題でした。また、私自身が専業の通訳者・翻訳者ではないという負い目もありました。「果たして自分のような立場の者がAdministratorを務めていて良いのだろうか」という迷いは常にありましたが、私を選んでくれた皆様の期待に応えるべく、精一杯努力することを心がけました。
この経験を通じて学んだのは、多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まることで、組織により豊かな視点がもたらされるということです。アカデミアの視点を持つ者として、実務者の皆様とは異なる角度からJLDに貢献できたのではないかと思っています。
教育現場での交流
私の翻訳・通訳コースのゲストスピーカーとして、JLDメンバーの方々を何人かクラスにお招きしました。中でも、オハイオ州の通訳者Denise Fisherさんが、私のクラス訪問の経験を基に2019年のSchool Outreach Contest Winnerを受賞したことは、教育者として大変感慨深い出来事でした。このような形で、JLDの活動が次世代の翻訳者・通訳者育成につながっていることを実感できました。
JLDの意義と今後への思い
もしJLDがなかったら、私の翻訳・通訳教育に対する視野は今ほど広がらなかったでしょう。実務の現場で活躍する方々との継続的な交流は、教育内容の改善や学生へのより実践的な指導へとつながっています。また、業界の動向や課題について常にアップデートされた情報を得ることで、研究活動にも良い影響を与えています。
ATA及びJLDは単なる職業団体ではなく、経験や専門分野の異なるメンバーが互いに学び合い、支え合う温かいコミュニティです。新しいメンバーを歓迎し、経験豊富なメンバーが知識や経験を惜しみなく共有する文化が根付いており、この環境こそがJLDの最大の財産だと思います。
おわりに
Administrator としての任期は終わりましたが、現在もNominating Committee のメンバーとして、そして一人のJLD会員として、この素晴らしいコミュニティに関わり続けています。これからも、日英・英日翻訳の発展と、翻訳者・通訳者コミュニティの結束に微力ながら貢献していければと思います。
JLDでの経験は、私の職業人生において かけがえのない財産となりました。この機会を与えてくれた皆様、そして共に活動した仲間たちに心から感謝しています。
本記事は、ATA JLD での経験を基に執筆しました。JLDや翻訳・通訳業界に興味のある方は、ぜひATAの年次カンファレンスに参加してください。新しい出会いと学びが待っています。
Leave a Reply